選択肢１ 甲土地につき、時効により所有権を取得したBは、時効完成前にAから甲土地を購入して所有権移転登記を備えたCに対して、時効による所有権の取得を主張することができない。

【答え】誤り

【解説】

時系列は下記の通りです。

1. A所有の土地について、Bが平穏かつ公然に占有
2. AがCに売却しCが登記（以前、Bは占有）
3. Bの時効が完成

Bの時効完成前に、CはＡから甲土地を購入しているので、Cは、時効完成前の第三者です。
そして、時効により所有権を取得したＢは、時効完成前の第三者Cに対して、登記なく所有権を主張することができるというルールになっています。したがって、「Bは、時効完成前にAから甲土地を購入して所有権移転登記を備えたCに対して、時効による所有権の取得を主張することができない」という記述は誤りです。正しくは、「Bは、時効完成前にAから甲土地を購入して所有権移転登記を備えたCに対して、時効による所有権の取得を主張することができる」です。この点は、理解すべき部分なので、個別指導で解説します。無料講座でも、理解学習の一部を解説しているので、参考にしてみてください！

選択肢２ 甲土地の賃借人であるDが、甲土地上に登記ある建物を有する場合に、Aから甲土地を購入したEは、所有権移転登記を備えていないときであっても、Dに対して、自らが賃貸人であることを主張することができる。

【答え】誤り

【解説】

問題文の状況は下記の通りです。

1. Aが土地をDに賃貸し、Dが建物を建築し、建物の登記を備えている
2. Aが当該土地をEに譲渡したが、Eは登記を備えていない

Dは、借地権者であり、かつ建物所有者です。そして、借地上の建物を登記しているため、Dは対抗要件を備えています。その後、Eが、土地所有者Aから土地を買い受けているので、Dは、Eに対して借地権を対抗できます。逆に、「Eは、Dに対して、自らが賃貸人であることを主張することができない」ので、本肢は誤りです。Eが賃貸人であることを対抗するためには、移転登記をする必要があります。

選択肢３ Aが甲土地をFとGとに対して二重に譲渡してFが所有権移転登記を備えた場合に、AG間の売買契約の方がAF間の売買契約よりも先になされたことをGが立証できれば、Gは、登記がなくても、Fに対して自らが所有者であることを主張することができる。

【答え】誤り

【解説】

Aは、自己所有の土地をFとGの二社に売却しています。そして、Fが先に登記を備えています。この場合（二重譲渡の場合）、先に登記を備えたほうが対抗力を備えます。本肢の場合、Fが登記を備えているので、Fは、Gに自らが所有者であることを主張できます。よって、本肢は「Gは、登記がなくても、Fに対して自らが所有者であることを主張することができる」となっているので誤りです。たとえ、AG間の売買契約の方がAF間の売買契約よりも先になされたことをGが立証できたとしても、GはFに対抗できません。

選択肢４ Aが甲土地をHとIとに対して二重に譲渡した場合において、Hが所有権移転登記を備えない間にIが甲土地を善意のJに譲渡してJが所有権移転登記を備えたときは、Iがいわゆる背信的悪意者であっても、Hは、Jに対して自らが所有者であることを主張することができない。

【答え】正しい

【解説】

選択肢３のとおり、基本的な考え方として、二重譲渡が行われると、先に登記を備えた者が第三者に対する対抗力を備えます。そして、Iは背信的悪意者なので、登記を備えても対抗力を備えません。言い換えると、Hは、背信的悪意者Iに対しては登記なくして対抗できます。 しかし、本肢は、HはJ（善意で登記を備えている）に対して対抗できるか？という質問内容です。これに対する解答としては、Ｊが背信的悪意者でない限り、第三者として扱うので、基本的な考え方に従って、Ｈは登記がない限り、Ｊに対抗できません。よって本肢は正しいです。

まとめ 本問は、所有権の対抗関係（物権変動）に関する出題です。苦手としている人も多いですが、理解ができれば、比較的簡単なので、理解をしながら頭に入れていきましょう！