選択肢１ ＡとＢとの間で、Ａを売主、Ｂを買主とする、等価値の美術品甲又は乙のいずれか選択によって定められる美術品の売買契約が締結された。 本件契約において、給付の目的を甲にするか乙にするかについて、第三者Ｃを選択権者とする合意がなされた場合、Ｃが選択をすることができないときは、選択権はＢに移転する。 

【答え】誤り

【解説】本肢のように、契約において給付するモノが複数ある場合、その中から選択権者の選択によって定められます。言い換えると、モノを請求できる権利（債権）を選択によって定めるので「選択債権」といいます。
＜本肢＞
第三者が選択権者となっている場合に、原則として、この第三者が甲にするか乙にするかを決めます（民法409条1項）。 しかし、その第三者が選択することができない場合、または選択しない場合には、債務者である売主Ａが選択権を持ちます（民法409条2項）。 よって、「選択権はＢに移転する」が誤りです。「選択権はＡに移転する」というのが正しいいです。

選択肢２ ＡとＢとの間で、Ａを売主、Ｂを買主とする、等価値の美術品甲又は乙のいずれか選択によって定められる美術品の売買契約が締結された。 本件契約において、給付の目的を甲にするか乙にするかについて、Ａを選択権者とする合意がなされた後に、Ａの失火により甲が全焼したときは、給付の目的物は乙となる。 

【答え】正しい

【解説】
選択権者Ａの過失により、履行不能となった場合、選択権は、残存するものについて存在します。本肢の場合、甲が全焼した（履行不能となった）ときは、当然に乙が選択されることになります（民法410条）。 よって、売主Ａは、乙を買主Ｂに引き渡します。

選択肢３ ＡとＢとの間で、Ａを売主、Ｂを買主とする、等価値の美術品甲又は乙のいずれか選択によって定められる美術品の売買契約が締結された。 本件契約において、給付の目的を甲にするか乙にするかについての選択権に関する特段の合意がない場合、Ｂが選択権者となる。 

【答え】誤り

【解説】
選択債権の選択権者は、原則、債務者（売主Ａ）です（民法406条）。ただし、特段の合意があれば、その合意に従います。 本肢は、特段の合意がないので、原則通り、選択債権の選択権者は、債務者（売主Ａ）です。

選択肢４ ＡとＢとの間で、Ａを売主、Ｂを買主とする、等価値の美術品甲又は乙のいずれか選択によって定められる美術品の売買契約が締結された。 本件契約において、給付の目的を甲にするか乙にするかについて、第三者Ｄを選択権者とする合意がなされた場合、Ｄが選択権を行使するときは、ＡとＢの両者に対して意思表示をしなければならない。 

【答え】誤り

【解説】
第三者が選択権者となっている場合、第三者は、債権者または債務者のどちらか一方に対して、甲と乙のどちらを選択するか意思表示をすればよいです（民法409条1項）。 よって、「ＡとＢの両者に対して」は誤りです。

まとめ 選択債権はこれまで出題されたことのない内容です。そのため、この年に宅建試験を受験した人は、解けなくても仕方がありません。ただ、宅建試験で出題された以上、今後も出題される可能性があるので、余裕があれば、条文を含めて確認しておくとよいでしょう！