選択肢１ Ａに雇用されているＢが、勤務中にＡ所有の乗用車を運転し、営業活動のため得意先に向かっている途中で交通事故を起こし、歩いていたＣに危害を加えた。
ＢのＣに対する損害賠償義務が消滅時効にかかったとしても、ＡのＣに対する損害賠償義務が当然に消滅するものではない。

【答え】正しい

【解説】

本肢は使用者責任の問題です。結論からいうと、被用者（従業員）Ｂの損害賠償債務が消滅時効により消滅しても、使用者Ａの損害賠償債務は消滅しません。よって、本肢は正しいです。
まず、使用者責任とは、雇用されている者Ｂが，その職務を執行するに際して（仕事中に）、第三者Ｃに損害を与えた場合に，被用者Ｂを雇用している使用者Ａが負う不法行為法上の損害賠償責任を言います。 そして、使用者責任は、危害を加えた者Ｂと使用者Ａが連帯債務です。つまり、本肢の場合、従業員Ｂの損害賠償債務と、使用者Ａの損害賠償債務は連帯債務です。そして、使用者責任における損害賠償債務は、連帯債務であり、さらに、相手方に債務を弁済する以外の事柄については、連帯債務者間で影響を及ぼしません（相対効）。つまり、従業員の損害賠償債務が時効になって消滅しても、使用者の債務には全く関係しないので、使用者Ａの損害賠償債務は、消滅せずに残ります（相対効という）。よって、本肢は正しいです。

選択肢２ Ａに雇用されているＢが、勤務中にＡ所有の乗用車を運転し、営業活動のため得意先に向かっている途中で交通事故を起こし、歩いていたＣに危害を加えた。
Ｃが即死であった場合には、Ｃには事故による精神的な損害が発生する余地がないので、ＡはＣの相続人に対して慰謝料についての損害賠償責任を負わない。

【答え】誤り

【解説】

被害者Ｃが即死の場合、「被害者の慰謝料請求権」は、被害者の相続人に相続されます。つまり、相続人は、慰謝料などの損害賠償請求権を相続し、Ａ及びＢに対して請求することが可能です。
即死であっても、損害賠償責任は相続される点を覚えておきましょう！よって、本肢は「Ｃが即死であった場合には、Ｃには事故による精神的な損害が発生する余地がないので、ＡはＣの相続人に対して慰謝料についての損害賠償責任を負わない」という記述は誤りです。

選択肢３ Ａに雇用されているＢが、勤務中にＡ所有の乗用車を運転し、営業活動のため得意先に向かっている途中で交通事故を起こし、歩いていたＣに危害を加えた。
Ａの使用者責任が認められてＣに対して損害を賠償した場合には、ＡはＢに対して求償することができるので、Ｂに資力があれば、最終的にはＡはＣに対して賠償した損害額の全額を常にＢから回収することができる。

【答え】誤り

【解説】

使用者Ａが、被害者Ｃに対して全額賠償した場合、使用者Ａは、被用者Ｂ（加害者）に対して信義則上相当と認められる限度で求償できます。本肢は「被用者に対して常に全額を求償できる」となっているので誤りです。本肢は具体例があると分かりやすいので、個別指導では具体例を出して解説します。具体例を入れて勉強する勉強法は、理解学習の一つなので、ぜひ、取り入れていきましょう！理解学習勉強法を実践できれば、宅建試験は一回で合格できます。もし、一回で合格できないのであれば、理解学習勉強法を実践できていない証拠なので、勉強法を変えていきましょう。

選択肢４ Ａに雇用されているＢが、勤務中にＡ所有の乗用車を運転し、営業活動のため得意先に向かっている途中で交通事故を起こし、歩いていたＣに危害を加えた。
Ｃが幼児である場合には、被害者側に過失があるときでも過失相殺が考慮されないので、ＡはＣに発生した損害の全額を賠償しなければならない。

【答え】誤り

【解説】
原則として、被害者側にも過失があるのであれば、その過失分は、損害賠償額から差し引かれます。そして、被害者が幼児の場合、幼児自身には過失がなくても、親のような保護者に過失がある場合は、過失相殺を考慮します。本肢の場合、被害者側となっていますが、例えば「幼児および親」です。つまり、もし、親がその場にいて、親に過失があるのであれば、被害者側に過失があるとして、過失相殺されるので、本肢は誤りです。

まとめ 本問は使用者責任および過失相殺に関する出題です。使用者責任は頻出なので、絶対解けるようにしましょう。また、過失相殺については、頻出ではないものの、本肢のように一選択肢だけ出題されることがあります。内容的には基本事項なので、覚えておくと、他の受験生より一歩前に出ることができます。こういった部分で差を付けて行きましょう！